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  テレクラ放浪記(7)-5 Date: 2003-07-09 (Wed) 
4.デブ専門伝言ダイヤル

 私はこの女と会ってもすぐ戻るつもりだったのでテレクラのフロントにバッグを預けていた。それをとりに戻ると店の責任者が待っていた。
「長かったですね。どうでした?」と聞いてきた。援交はしない、と宣言していた手前、私は事実を話さず「おもしろい話になったんで、つい」といって逃げた。

「これから暑くなると女も出てくるのがめんどうになります。この季節はテレクラより伝言のほうがいいですよ」といって彼は一枚のカードを見せてくれた。
「うちだけの特殊兵器もあります」といって伝言ダイヤルのシステムを説明してくれた。

 簡単に説明すると〈電話の私書箱〉といえばわかりやすい。

 直接相手と電話で会話することなく〈私書箱〉を通してお互いのプロフィールを交換し、気に入ったら直接会話する方式で、そもそもNTTが始祖らしい。
繋がっても話の合わない場合の多いテレクラと違って、予め相手のプロフィールは確認し承認済なのでスッポカシや「こんなはずじゃあ」ということもなくゲットしやすいとのふれこみだった。
決められた時間内であれば何回も使えることや、24時間コンピュータが稼働していることは前述したツーショットと同じだ。
テレクラで売っているプリペイドカードで指定された電話番号にかけると使い方のアナウンスが流れる。それに従ってカードに記入されている会員番号と暗唱番号をインプットすると、自分だけの私書箱(プライベイトボックス)を作る作業にすすむ。
それは自分だけの4ケタの番号を入れるだけでいい。
それからが本番で、直接話せるまでの全てのコミュニケーションはそのボックスを介して行われる。
女性(女性がする場合は男性)とコンタクトをとる方法は二通りあり、一つはオープンボックスといわれる自己宣伝用のボックスに自分のプロフィールメッセージを吹き込んでおいて、それを聞いた女性からの返事を待つというもの。
もう一つは女性用のオープンボックスに吹き込まれた複数の女性のプロフィールメッセージを聞いて、気に入った女性のプライベイトボックスに返事を入れて、さらにその返事を待つというもの。

最初の段階で自宅や携帯の番号は入れられず(これに違反するとそのメッセージは削除される)特定の相手との2回目以後のメッセージ交換の後に初めてそれを入れることができる。つまり、お互いのプライバシーを守りながら気に入った同志のみの出会いが期待できるというシステムだ、という。

風俗体験取材 末森ケン さらにこの伝言には他店にはない秘密兵器があって、それは各人の趣味に合わせて、エッチ交際、SM伝言、果てはホモ伝言のコーナーに分かれていて「その中でもこれがお薦めです。百発百中ですよ」と自信ありげに説明されたのが「太め女性大好きコーナー」通称〈デブ専ダイヤル〉だった。
どうやらそのコーナーは太った女専用で、男に相手にされないデブ女からのメッセージでいっぱいで、簡単にゲットできるらしい。
私は〈不毛の季節〉を埋めるにはちょうどいいと思い、その話にのった。うまくいったら記事にしてほしい、ということなのだろう。
彼は2時間ぶん、5千円相当のカードをサービスとして渡してくれた。

 帰宅した深夜、私は早速電話してガイダンスとおりに電話機のボタンを押して会員番号と暗唱番号を入力し、さらに4ケタの番号を入れてプライベイトボックスをつくった。気が短い性格なのでテレクラ店長のいうとおり〈デブ専〉コーナーにアクセスする。そこで最初の手順として女のオープンメッセージを聞いてみた。

 驚くまでもなくそこはデブ女の吹き溜まりだった。メッセージを聞いているうちに男の思う、いわゆる〈ポチャめ〉とはまったくかけ離れた本当のデブであることがわかった。

「身長155センチ、80キロ。30歳」なんてのはザラで「160センチ、体重は2ケタぎりぎりの18歳」という怪物からのメッセージもあった。
しかも援助交際メッセージは削除されると聞いていたが、それらしきニュアンスをもったメッセージもあるところをみると、本物のマニアの世界らしい。テレクラデブ女には慣れた私だったがさすがに返事をいれなかった。それは正解だった。

 カードを推薦した店長によれば、何人もの女のメッセージを聞いていると時間が経ってしまい損なので、自分のメッセージを入れて相手からの返事を待つほうが有効であるという。その理由として、女は誰に聞かれるかわからないので、メッセージを入れるより男のオープンメッセージを聞くタイプのほうが圧倒的に多いことをあげた。それにオープンメッセージを入れる女は質が良くないともいっていた。私はメッセージを入れた。

「こんばんわ、私は40代半ばのホテルマンです。ドラえもんのようなコロコロしている女性が好きです。20代から30代半ばの人で明日のお昼ころ池袋でお会いできる人。お返事待ってます」。
ただこれだけのメッセージだったが、翌日の朝には5件の返事がボックスに入っていた。

 私はいっぺんに5人の女からラブコールをもらったことに興奮していた。ボタンを押して順々に聞いた。手が震えるのがわかった。

「大学生です。太っているので気に入ってもらえると思います」「池袋は近くありませんが、おつきあいしたいです。25歳の既婚者です」「若くないのでダメかしら。39歳の主婦で身長150センチで体重は80キロぐらいです。エッチしたくてお返事しました。割り切ったおつき合いで」「販売業のOLです。センスはあると思ってます。できたら郊外のモテルで遊んで下さい。身長160センチで、体重はヒミツです」「池袋だったらすぐに行けます、職業は専業主婦です。ややポチャですけどよろしく」。

 女を選ぶ快感とはこれだったのか。

 デブ女でも解剖学的にはオンナにちがいない。益々私の気は高ぶった。
私は、センスがいいと自画自賛するOLと池袋に近いという主婦のボックスに私の電話番号を入れた返事を返した。ものの30分もしないうちに主婦から電話があった。「よかったらお昼でも」という。むろんそのあとはベッドに違いない。それが証拠に「秘密だけは守ってください」といっていた。

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