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  テレクラ放浪記(8)-2 Date: 2003-07-23 (Wed) 
末森ケン 取材ということもあってテレクラのフロントマンは〈質のよい〉コールを回してくれた。おかげで二人とも女と約束がとれ、三人組は出動した。
 編集者I氏は渋谷駅、私は新玉線の二子新地なので都合がよく、最初にI氏の現場を盗撮し、その後私がカメラマンに追跡されることになった。
 I氏の相手はI氏の前に私が話した女で背の高い女だった。私の身長をいうと電話を切ったなまいきな女だ。遠目に見ても美人ではないがブスでもなかった。カメラマンは文化会館のティールームに入った二人を追い、そして外からガラス越しにお茶を飲んでいる二人にカメラを向けた。私はその俊敏な動作に感心した。時間がないのでその後はI氏にまかせ、私とカメラマンY氏は目的地に向かった。

 私の相手は28歳の美容師でその日は定休日といっていた。
 スカの予想もついたが、いなかったらすぐに戻って近場からのコールを選んでアポをとる予定だったので少しは余裕があった。女は駅で待っていた。
 小柄でメガネをかけたどこにでもいるような女だった。「買い物に行くからつきあって」という。
 私と女は電車に乗り、隣の駅にあるショッピングセンターまで行くことになった。後ろを振り返るとY氏がそれとなくいるのが見える。女はセーターとブラウスを買うと「これからどうする?」と聞いてきた。まだ女の調査をしていなかったので喫茶店に誘った。「喫茶店に入ったら、なるべく奥の席に座って下さい」と指示されていたのでそのとおりにした。
 女はいかに美容室の仕事が大変であるかを1時間ほどしゃべった。肩凝りや腰痛で悩まされているようだった。「あとで揉んであげますよ」というと「それってエッチな意味ですか?」とさらにキツい顔をした。女がトイレにたった時に店内を見回すと入り口近くにY氏が座っていた。「そろそろ引き上げます」という。女と会ってからすでに2時間は経過していた。Y氏の携帯が鳴る。そのあと「Iさんはうまくいったみたいですよ」といった。財布には4千円しかない。私はこのまま女と別れて帰るつもりだったが、I氏の〈成果〉を聞いて女を口説かねばと思った。私はY氏から3千円を借りた。

 女と外へ出ると日は暮れていた。後ろにはY氏の姿はなかった。
 私はストレートにいった。「今日は二人だけになりたいな」黙る女。「お話だけっていったじゃない」「会うまではその気だったけど」「それで?」。全く関心がないような態度だったので、夜は不得手だが池袋のテレクラに戻って再度挑戦しようと駅に着いて切符を買おうとした。
 女はいった。「ホントに帰っちゃうの。信じられない」。もうどうでもよかった。「池袋のテレクラに戻るつもり」と正直に話した。「ちょっと待ってえ。私を置いていく気」。女は私の手をとった。そして駅とは反対方向に進む。
 しばらく歩くと多摩川の土手にぶつかった。その道路端にホテルの看板がみえる。「短気なのね。女を口説くのに慣れてないんでしょう」とつぶやく。
 話の方向が変わったようだ。「わかった、今日初めて来たんだテレクラへ」「そんな気がした」「で、さっきの話はいいの?」と聞くと「嫌いなタイプだったら、すぐ別れているわよ」と初めて笑った。

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