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  テレクラ放浪記(9)-2 Date: 2004-01-06 (Tue) 
 この世界では珍しいことではなく、そんな話だけで一冊の本になるくらいの惨めな体験は山ほどあった。遠距離スッポカシで最高の距離は小田原と高崎だった。思い出しただけでも腹が立つ。書くのもイヤだ。

 車どころか免許さえない私にとっては、所用で知らない街を歩いていてラブホテルを見つけると忘れずにメモっておいた。
情報誌に載っていないホテルも多数あった。中野、高円寺、阿佐ヶ谷、練馬、下北沢、小岩、葛西、北千住などのホテル地図専用のシステム手帳もつくった。
歓楽街を除いた都心ではラブホテルは少ないことがわかった。国分寺と所沢については数年通っているせいか、駅周辺はもちろん、公衆電話のある場所と数、喫茶店、レストラン、そこから一番短時間で行けるホテル、さらに女の質によって金のかけかたも異なるので、ブスデブ女には回転寿司かマック、若くてイイ女であればおいしい寿司屋やパスタ屋、あるいはエスニックレストラン、と情報はぬかりなく調べた。
今では、どこにどんな色したノラ猫がいるかまで頭に入っている。だが、それはたいして役にたたなかった。〈ヤル気〉のある女は誘われた時のことも準備していた。さすがにはっきりと「ラブホテルはあそこよ」とは言わなかったが「たしか、あっちのほうで見かけたような気がしましたよ」などといって指をさす女も珍しくなかった。

 赤羽のテレクラで会ったヒトミもそのうちのひとりだった。

 予想を外れて近くの団地妻からのコールはなく、京浜線か埼京線のそれも埼玉方面が主だった。アポれそうなコールはあったが往復に30分以上かけるのはつらかった。
行って、もしスカであったら女を待つ時間も含めると1時間のロスになる。
その時は近場狙いだったので2時間コースで入場していたため、やむなくそれ以上プッシュしなかった。

 残り時間わずかのお昼ごろ、駅にいるという女と繋がった。

 年齢は22歳で既婚だという。
私の歳をいっても驚くでもなく「年配の人につないでっていったから」と落ちついた声だった。
いうまでもなく私は援交だと思って「俺って貧乏人だから、ダメだなあ。フロントに返そうか」といった。
ふつう取り次ぎ制のテレクラでは、話の合わなかった場合、電話機の番号を押せば、かかってきた電話をフロントにいったん戻せる仕組みになっている。
私は9番のボタンを押そうとした。「いいの、いいの。ソレじゃないから」と慌てたようすだった。ならばよほどのデブかブスに違いない。あるいは美人局か財布抜きか?。
が、考えているうちに時間をオーバーすると延長料金を取られる。ヘンな女だったら適当に別れて、昼サロでもいって遊ぼう。
私は会う理由も聞かずに店を出て駅に向かった。

 日差しがキツくて駅についた時は汗が流れていた。

 女は改札口横の券売機の前にいた。
私が作った〈テレクラ女の第一法則〉によれば「チョイポチャ目」は大デブ。「中肉中背」がホントの「チョイポチャ」である。これはデブ専門伝言ダイヤルで知り合った、たった一人の例外を除いて一回の間違いもなかった。

 彼女は中肉中背と言っていたとおり、チョイポチャだった。
盛夏にもかかわらず長袖のジャンパーふうジャケットにフレアスカート。全体にゆったりした恰好で、中身はデブの証拠だ。
だが、顔は親しみのもてるキュートな感じて好感がもてた。
やっぱりデブでも若ければ発情する。私は条件しだいでこの女と遊ぶことにした。

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